会社のロゴや広告、パンフレットを作るために、デザイナーに依頼しようと考える方も多いでしょう。
デザイナーに任せれば会社の事業内容に合わせたロゴ、素敵なデザインの広告などを作成してくれると期待すると思いますが、依頼する際に注意すべきポイントがあることはご存知でしょうか?
実はデザイナーにデザインを作成してもらう場合、全部をお任せするのではなく依頼者側も最低限準備と守っておきたいポイントがあります。
そのポイントを意識せずに依頼してしまうと、依頼者もデザイナーも十分な結果を出すことができず、時間とお金だけが掛かりお互いに損失となってしまうこともあるのです。
ではどのような注意点を意識すればお互いが満足できる作品が出来上がるのか、この記事では依頼で注意すべきことと、伝えるべき事項を解説します。
依頼者が注意すべきポイントとは
デザインの依頼をする際に注意すべきポイントを、よくない依頼の出し方も交えながら紹介します。
依頼するときに注意すべきポイントは次の4つです。
- 具体的なイメージを固めてから依頼する
- スケジュールは2週間以上の余裕をもたせる
- 修正の可能性も予想して料金を見積もる
- 仕事は契約書を結んでから進める
具体的なイメージを固めてから依頼する
依頼者側によくある依頼の出し方として、具体的なイメージが定まっておらず、抽象的な指示を出してしまうケースがあります。
抽象的な指示とは下記のようなものです。
- かっこいいデザインにしてほしい
- 可愛いデザインを作ってほしい
- 綺麗な感じに
- 会社のイメージ合わせてお任せ/適当に
このような抽象的なイメージはデザイナー側にとって非常に嫌な依頼の出され方です。
抽象的なイメージを言語化したものはデザインにおける表現の幅が広いだけでなく、「かっこいい」「可愛い」という主観的な情報は人によって受け取り方が変わります。
そのためデザイナーが「かっこいい」と思ったものも、依頼者側からすれば「可愛い」と受け取られる可能性があります。
デザイナー側から依頼者に詳しいイメージを聴きづらい場合もあるため、双方のイメージを共有できないまま進めて失敗する可能性が高いです。
依頼者側はデザイナーが作品を制作しやすいように、参考となる資料、求めているイメージに近いパンフレット、Webサイトを明示しましょう。
そのうえで「この資料のこの部分をこう変えて欲しい」「このWebサイトのような明るいデザインに」という具合に、参考となるものを提示すればデザイナー側も作成しやすくなります。
依頼者側も最低限のイメージと、参考になる資料の準備をしてからデザインを依頼するのが重要です。
スケジュールは2週間以上の余裕をもたせる
デザインを作成する作業はイメージのすり合わせ、参考資料の調査、ラフ案の提出、色入れなどいくつもの段階を踏んで行われます。
デザイナーにとっても、完成度の高い作品を作るためには2週間以上の余裕をもったスケジュールは必要です。
しかし良くない依頼の出し方として下記のものがあります。
- 適当でいいから3日以内に
- 明後日が提出日なので明日までに作ってほしい
- なるべく早く
このような依頼者の一方的な都合を押し付ける依頼の出し方は良くありません。
スケジュールが厳しい場合、デザイナー側も期限に間に合わせるため十分な資料を探すことができず、ラフ案も不十分なままで作品作りに入ることになります。
結果的に作品として不完全な状態で依頼者に提出することになり、依頼者とデザイナー双方にとって不満を残す結果で終わるでしょう。
スケジュールは余裕をもたせ、できればマイルストーンを設定して「2日後にデザインのすり合わせ、7日後にラフ案の提出」と道筋を立てて、無理のないスケジュールを立てましょう。
修正の可能性も予想して料金を見積もる
デザインの料金は制作物のサイズ、用途、デザイナー自身の能力など複合的な要因で変化します。
提出された作品で問題なければ追加料金はありませんが、契約内容によっては修正回数に応じて料金が追加されることもあります。
デザインを依頼する際には、修正で追加料金が発生する可能性も考慮した見積もりが必要です。
そのうえで依頼する際に注意してほしいのは次の点です。
- 修正は無料無制限にできるものではないことを理解する
- 依頼者側も具体的なイメージを持って修正回数を最低限に抑える
- 依頼の際は値切りをしない
通常、契約の際に修正回数は決められており、規定回数以上の修正は受け付けないデザイナーや料金に上乗せするデザイナーもいます。
依頼者側も具体的なイメージを伝え、修正回数が少なく終わるように努力が必要です。
またデザイナーもプロとして仕事をしているため、依頼で料金の値切りをしてはいけません。
デザイナーから作品に対するモチベーションを奪い、作品の完成度に悪影響が出てしまいます。
デザインの料金設定で悩んだ場合は、日本イラストレーター協会が定める「イラストの料金と著作権に関して」を参考に決定してください。
仕事は契約書を結んでから進める
デザイナーに仕事を依頼する際、特に重要なのが契約書を結ぶことです。
契約書を結ばずに進めた結果、起こりがちなトラブルには次のようなものがあります。
- 修正回数の決まりを設けておらず、料金が予算を大きく上回った
- デザイナーまたは依頼者との連絡が取れなくなった
- 他のデザイナーの案を採用し、作成したデザインが全て無駄になった
- 納品した制作物に対する料金が支払われず、別のところで流用された
このようなトラブルが起こると、最悪の場合訴訟問題へと発展し、依頼者・デザイナー双方に悪いイメージがついてしまいます。
そのため、事前に次の内容を盛り込んだ契約書を締結しておきましょう。
- 制作物の納期
- 制作物の利用用途、目的
- 作品を複数制作する場合、制作数に応じた支払い金額
- 修正依頼を行う際の回数上限
- 知的財産権の譲渡内容及び譲渡のタイミング
- 作品を二次利用した場合の支払い金額
- 納品完了後、作品に対する結果報告
契約中から契約終了後まで、トラブルを避けるためにお互い合意のうえで契約書を締結することをおすすめします。
依頼の際に伝えるべき事項とは
デザイナーへの依頼で注意すべき点が理解できたかと思います。
続けてデザイナーに依頼する際に、どのような内容を伝えればスムーズに仕事が進められるのか解説します。
伝えるべき事項とともに、NGとなるポイントも解説するので参考にしてください。
デザインの使用目的
デザインの使用目的は必ず伝えるべき事項です。
デザイナーにとってもデザインをどこで使用するのか把握していないと、どのようなイメージをもって制作すればいいのか想定しにくくなります。
会社のロゴ、広告、パンフレット、インターネットのサイトなどデザインは使用目的に応じて変える必要があるため、何に使いたいのかデザイナーに伝えましょう。
また伝えるときは目的だけでなく、デザインで何を伝えたいのか、ユーザー目線でのイメージを伝えることが大事です。
デザインに入れたい素材の提供
デザイナーに依頼するときには、参考資料を提供することは前述の通りです。
その中で特に入れてほしい素材があれば、デザイナーに提供しましょう。
素材はできるだけ解像度の高いもの、素材のコピーではなく元となるデータが理想です。
紙での資料や解像度の低い画像は、イメージの伝達が不明瞭になることがあるので避けましょう。
データの形式
デザインは使用目的によって納品データの形式も適したものがあります。
一例ですが、ロゴの納品であれば次のデータ形式が一般的とされています。
- .ai
- .eps
- .psd
- .png
- .jpeg
簡単に説明すると「.ai」はIllusratorがインストールされていないと開くことができない形式、「.eps」はIllustratorをインストールしていないと開けない代わりにどんなブラフィックソフトでも編集できる形式です。
また「.psd」はPhotoshopで作成されたデータ形式、「.png」は色を透過することもできるデータ形式、「.jpeg」はデータが軽くWeb上で綺麗に映るデータ形式です。
このようにデータ形式によって取り扱いが異なるため、どのようなデータ形式で納品してもらうのかはあらかじめ伝えておきましょう。
バックアップとしてPDFデータを一緒に欲しいことも伝えると安心です。
画像サイズ・解像度
画像サイズとは実寸でのサイズ、ディスプレイにおける表示領域のサイズのことです。
解像度とは画像を表現する精細さの尺度です。
画像サイズや解像度は印刷やWeb上での使用の際、引き伸ばしや縮小されてもわかりやすいサイズ・解像度を指定しましょう。
小さい画像サイズで作成してもらうと、引き伸ばしで画像のぼやけ、不鮮明な部分が発生してしまいます。
また通常のサイズでは同じように見える画像も、解像度の高低によってサイズ変更により不鮮明になることもあります。
デザインの使用目的が明確であれば、どのくらいのサイズと解像度なのかを伝えることが重要です。
どのくらいの画像サイズ・解像度がちょうど良いのかわからない場合は、ネットで「画像サイズ 解像度」で検索すれば、画像サイズごとに適した解像度がわかるので参考にしてみてください。
必要な作品の本数
1人のデザイナーから複数の案を出してもらうケースもあります。
そうした場合、複数必要ならいくつの作品を提出してほしいのか、その場合は料金はどうなるのかといった内容も伝えてください。
複数案が必要だと知らされておらず、後になって伝えられるとデザイナーは再び資料探しから開始しなければなりません。
その分の時間と手間が掛かってしまうので、あらかじめ必要な作品数を明示しておくことが大事です。
またコンペ形式で複数のデザイナーから案を出してもらっていること、複数案の中から1つを選ぶ場合は、そうした事情も伝えてください。
ラフ案、修正回数による料金
デザイナーが作品を作るにあたっては、いきなり本番の作品作りに入るわけではなく、事前にラフ案を作成するケースがほとんどです。
ラフ案はデザイナーの中にあるイメージを具体化するだけでなく、依頼者とイメージを共有する意味でも重要な存在です。
そのためラフ案を作るにもデザイナーは時間をかけるため、その分の料金を支払いに含めるかどうかを明示しましょう。
またラフ案が完成し、作品作りをしていると修正が入ることも珍しくありません。
その場合、修正回数に応じて料金はどうなるのかを伝えることも大事です。
修正無制限ではないと認識して、何回まで受け付けているのか、1回の修正で料金はいくらかかるかなど細かい条件についてもデザイナーとやりとりをしてください。
デザインに第三者が関係するかどうか
デザイナーにとって嫌なクライアントというのは、何回も修正をさせられてOKをもらった後、第三者からの指摘で修正をお願いしてくる相手です。
デザイナーのモチベーションにも大きく関わることなので、あらかじめデザインには誰が関わっているのか伝えることが大事です。
企業が依頼する場合、依頼担当者とデザインの許可を出す責任者が異なることも多く、依頼する際には誰が仕事に関わっているのか伝達してください。
会社の上司や別部門の担当者もいる場合は、どういう確認の手順を踏むのかデザイナーに伝えましょう。
まとめ
デザイナーに依頼する際に注意すること、伝えるべき事項について紹介しました。
デザインはプロのデザイナーに任せるだけでなく、依頼者側でもデザイナーが仕事をしやすいよう最低限準備するものがあるとご理解いただけたと思います。
抽象的な指示や厳しいスケジュールではデザイナーも本来の実力を発揮できません。
依頼者はできるだけ具体的なイメージで、余裕をもったスケジュールを提示するよう心掛けてください。
デザインする側も余裕をもった態度でデザイナーの提案を受け入れ、完璧な作品ばかりでなく、「80点90点くらいでも十分」という気持ちを持ちましょう。
デザイナーと良い関係を保って仕事を継続するには、情報共有とデザイナー側の事情を考慮した依頼の仕方も大事です。
依頼者とデザイナーの双方が「良い仕事ができた」と思えるように、ぜひ今回の記事を参考にしてください。