イラストレーターとして働いていると時々起こるのが、クライアントとのトラブルです。
- 突然連絡がつかなくなった
- イラストがほとんど完成したのに急にキャンセルされた
- 支払いを請求したのにいつまでも支払われない
このようなトラブルを経験したイラストレーターは、これまでに数えきれないほど存在します。
トラブルを事前に避ける方法、問題のあるクライアントに出会わない方法はないのでしょうか。
今回はイラストレーターがトラブルを回避するためのポイントと、問題のあるクライアントを見分けるコツを解説します。
イラストレーターとして活躍を続けていくためには、モチベーションの維持も重要ですが、トラブルに遭遇するとモチベーション低下の原因にもなります。
本記事のトラブル回避術を参考にして、モチベーションを維持してイラスト作成を続けてみてください。
トラブルを避けるために
クライアントとのトラブルはすべてのイラストレーターにとって、いつでも起こり得る問題です。
トラブルを避けるためには、依頼の開始~イラスト完成までにイラストレーター側でも注意しておくべきポイントがあります。
イラストレーターはどこに注意すべきなのかみていきましょう。
- イラスト作成は前払いがされてから
- イラストの費用が安い時は値段交渉も大事
- クライアントへのヒアリングはしっかりと行う
- 最初にラフ案を提示する
イラスト作成は前払いがされてから
フリーランスとして活動していると、前払いを依頼することに躊躇する方もいるかと思います。
前払いが必要と説明すると、依頼がキャンセルされたり、クライアントを信用していないと思われたり、といった不安を抱くことでしょう。
しかし、クライアントはイラストを見たうえで依頼してきているので、前払いを快く受け入れてくれるケースが多いです。
イラスト作成では前払いで仕事を受けているプロイラストレーターも多いため、前払い自体は特別なことではありません。
むしろ前払いをお願いせず、出来上がってからの支払いにした方がトラブルに見舞われる可能性が高いです。
クライアントによっては完成してから、「やっぱりいらなくなった」とキャンセルしてくることもあります。
こうなると何時間も掛けて描いたイラストが、日の目を見ることなく埋もれてしまいます。
なによりもイラストレーター自身のモチベーションが大きく低下し、次の作品作りにまで悪影響を及ぼしかねません。
自分自身を守るためにも、イラスト作成依頼があったときは前払いを提案してみてください。
イラストの費用が安い時は値段交渉も大事
クライアントによってはイラスト作成依頼が初めて、というケースも珍しくありません。
クライアント側で事前に相場を調べていればよいですが、相場を知らずに安い予算を提案してくることもあります。
イラストレーター側としても、イラストに必要なコストと不釣り合いな依頼は受けたくないと思うのが当然です。
依頼費用が安いときには、思い切って値段交渉をしてみることも大事です。
日本イラストレーター協会の費用相場を参考にしてもよいですし、コミッションサイト経由であれば相場を簡単に調べられます。
クライアントに相場を説明したうえで、値段交渉をしてみましょう。
クライアントが意図的に費用を低くしていない限り、相場に応じた値段に変更してくれるはずです。
イラスト作成を安く請け負うことも悪いわけではありませんが、自分自身のスキルの安売りはしない方が無難です。
また、イラスト作成を安く請け負うとイラストレーター業界全体にも影響しかねないため、安すぎる依頼は値段交渉を忘れず行ってください。
クライアントへのヒアリングはしっかりと行う
イラスト作成を行うえで基本的なポイントですが、クライアントへのヒアリングはしっかり行うようにしてください。
ヒアリングで聴くべきポイントは次の通りです。
- 使用目的・用途
- 画像のサイズ
- 使用するカラー
- 必要なイラスト点数
- 納品形式
- 参考となる資料
- イラストのイメージ
- 納品の期限
他にも細かいポイントは確認すべきですが、大きなポイントは上記の通りです。
ヒアリングではクライアントがどのようなイラストを希望しているのか、作成開始前にイメージを固める必要があります。
イラストレーターとして駆け出しの頃は、依頼があればすぐに取り掛かろうとする傾向があります。
結果として、修正が繰り返され、完成してもクライアントが気に入らないためにキャンセルする可能性もゼロではありません。
トラブルを回避するためにも、クライアントからしっかりとヒアリングを行い、イラスト完成までの道筋を作ることが大事です。
最初にラフ案を提示する
トラブルを避けるためには、完成形の作成を始める前にラフ案を確認してもらうことも大事です。
イラスト作成に関するトラブルでは、ラフ案を提示せずにイラストを完成させてしまったパターンが多いです。
クライアントにラフ案を確認せず完成させると、後になって大幅な修正を加えられる可能性が高まります。
完成後では修正も大変ですから、まずはラフ案でイラストの方向性をクライアントに確認しましょう。
ラフ案を提示するなら、2~3種類用意しておくとクライアント側が比較出来ておすすめです。
そして、決まったラフ案からどのようなイラストを作成していくのか、クライアントとよく相談してみてください。
注意すべきクライアントの特徴
ここからはイラスト作成において、注意すべきクライアントの特徴について細かく解説します。
次の条件に当てはまるクライアントはトラブルに繋がりやすい相手ですから、依頼を受ける際は細心の注意を払いましょう。
- 相場を明らかに上回る好条件を出している
- トライアルを強制してくる
- 連絡しても反応が遅い
- 依頼実績がないのに条件の良い案件を出している
- やたらと電話での相談をしたがる
- 契約後に条件を次々変えてくる
- 理不尽な修正を繰り返す
- 料金を安く買いたたこうとする
- 支払いが遅いまたは不払い
- 納品後の確認に時間が掛かる
相場を明らかに上回る好条件を出している
イラスト作成依頼を受けるなら、単価の高い好条件で仕事を受けたいと誰もが思うはずです。
そうしたイラストレーターの心理を利用しようと、高単価を餌にイラスト作成をさせようとするクライアントも存在します。
具体的には、実力を見るために最初はトライアルを行い、合格したら高単価の案件を回すというものです。
依頼の出し方としては、相場が1枚5,000円のイラスト作成を「1枚3万円で継続的依頼します」のような文言で釣り、安くイラストを提供させようとします。
特に駆け出しのイラストレーターでは、条件が良ければ飛びついてしまいそうな条件です。
そして、トライアルだけを受けさせて、その後は音信不通になるケースが実際に起こっています。
中には詐欺まがいの商材を売りつけようとするクライアントもいます。
依頼を受ける際は「単価が高い」という点だけでなく、クライアントの評判や活動歴も確認してください。
トライアルを強制してくる
問題のあるクライアントの特徴の一つに、「契約前にトライアルを強制してくる」ものもあります。
イラストレーターとしてクライアントから直接声を掛けられた場合、クライアントは絵を気に入って依頼していると考えるのが普通のことです。
しかし、直接依頼を持ち掛けてきたにもかかわらず、トライアルを強制してくる場合には要注意です。
また、トライアルのはずが厳しい納期と条件を設けているケースもあり、この場合も問題ありのクライアントの可能性があります。
通常、トライアルは実力を見る目的と、イメージに合ったイラストを描けるか把握することが目的で、スピード感を重視しないクライアントが多いです。
にもかかわらず、納期をぎりぎりに設定し、細かい条件を出してくる場合には、トライアルのイラストを転用または流用しようと考えている可能性が高いです。
ただし、トライアルを強制してくるすべてが悪質なクライアントとは限らず、本当に実力のあるイラストレーターだけを選抜しようとしていることもあります。
依頼を受けていくうちにそうした判断もできるようになりますが、「このクライアントは不安」と感じるようならお断りする方が安全です。
連絡しても反応が遅い
納期を指定しておきながら、連絡しても反応が遅いクライアントにも注意してください。
事前に反応が遅れると通知がされているわけでなければ、2日以上返事がないクライアントは問題ありです。
仕事には納期が設定されており、1日・2日でも無駄にするわけにはいきません。
連絡が遅いために仕事に取り掛かることもできず、結果的に苦しむことになるのはイラストレーター側です。
クライアントの連絡が遅い場合には、納期の再設定、次の連絡にどの程度の時間を要するか確認してみましょう。
連絡が遅いクライアントはコミュニケーション能力に難ありと考え、信頼できない理由を伝えて仕事をお断りする勇気も時には必要です。
依頼実績がないのに条件の良い案件を出している
依頼実績がないにも関わらず、好条件、大量に募集を出しているクライアントには要注意です。
クラウドソーシングサイトで時々見かける依頼で、クライアントの募集実績がゼロにもかかわらず、案件は大量かつ高単価で募集していることがあります。
こうした依頼ではとにかく人を集めて、別のSNSや情報商材サイトに誘導しようとするクライアントである可能性が高いです。
クラウドソーシングサイトの規約違反ですが、アカウントはすぐに作り直せるため、こうした悪質な業者が出てくることも珍しくありません。
複数人募集というだけでも人が集まりやすく、さらに高単価なら多くの人が魅力を感じるはずです。
しかし、こうした「あまりにも都合が良すぎる案件」はトラブルの元ですから、依頼を受ける前にクライアントの実績は忘れずチェックしてください。
やたらと電話での相談をしたがる
電話とメッセージでのやり取りの違い、それは「証拠が残るか否か」です。
メッセージではツールやアプリにいつまでも記録が残り、もしも訴えられでもすれば不利になります。
一方、電話であれば録音されていない限りは証拠が残りません。
こうした思惑があるクライアントは、重要な内容でも電話で伝えようとしてきます。
しかし、イラストの制作においては電話でのコミュニケーションは不適切です。
それは証拠や記録の問題だけでなく、イメージの共有やヒアリングにおいても可視化が難しく、イラスト作成の障害になるからです。
依頼があった場合には、電話ではなく文章化できるツールで連絡を取るようにしてください。
契約後に条件を次々変えてくる
契約は書面で内容を残すのが一般的ですが、書面がないと契約内容を後になって変更してくるクライアントも存在します。
中には条件変更に同意できなければ、支払いを拒否する悪質なクライアントもいるため、必ず契約内容を書面で残しましょう。
契約書面を残したがらないクライアントがいるとしたら、警戒したほうがよいでしょう。
ただし、イラスト作成に支障を来さない小さな条件変更については、ある程度許容する気持ちで臨んでください。
条件変更すべてを否定するのではなく、どこまでが許容できるラインか自分の中で線引きしておくことが大事です。
理不尽な修正を繰り返す
イラスト作成において、1度も修正依頼が来ないことは非常に稀です。
そのため、依頼においては2~3回程度の修正を前提として考え、契約においてもその点を加味して料金設定がされています。
問題となるのは「理不尽な修正」という点です。
例えば、次のようなものです。
- 非常に微細な点を修正依頼してくる
- 修正した点を元の戻すための修正をする
- なんとなく気に食わないから修正してほしい
こうした修正依頼で10回以上も修正することになると、イラストレーターもモチベーションが大幅に低下します。
クライアントからしても、修正回数に制限や追加料金がなければ軽い気持ちで修正依頼をしてきます。
理不尽な修正依頼を防ぐためには、契約段階で修正できる回数を設定しておくことと、規定した回数以上の修正では追加料金が発生することを明記しましょう。
クライアントも修正回数や追加料金が明記されていれば、修正してほしいポイントを吟味してくるはずです。
料金を安く買いたたこうとする
悪質なクライアントに引っかかってしまうと、安い費用で買いたたかれるリスクがある点にも注意です。
この場合、イラストレーター側に何ら不備がなかったとしても、難癖をつけて料金を下げようとしてきます。
修正回数が多かった、予想していたものと違ったなど理不尽な理由をつけ、少しでも費用を安くしようとしてきます。
イラストレーターとしては、期日通りに指定されたものを納品すれば仕事としては完了です。
契約する前に条件面にペナルティなどの条項が書かれていないかチェックし、ペナルティが無いにもかかわらず買い叩いてくるなら、自分の主張を明確にしましょう。
支払いが遅いまたは不払い
納品が完了し、支払い期限になっても料金の支払いがないクライアントに注意です。
たまたま忘れている可能性もありますが、仕事として依頼したにも関わらず忘れていたは許されるものではありません。
場合によっては、支払わずに逃げてしまう可能性もあるため、支払いは期限を決めて1日でも遅れたら連絡をしてみてください。
不払いで最悪のケースは、法廷での争いやクライアントの破産ということも考えられます。
クライアントの支払い能力に不安がある場合は、事前に経営状況や評判をチェックしてみましょう。
もしも過去に不払いがあるクライアントであれば、依頼を受けない方が安全です。
納品後の確認に時間が掛かる
イラストの作成には期限を定めておきながら、納品後に何日経過しても確認していないクライアントも時々います。
単純に確認に時間が掛かっているだけならまだ良いですが、中には修正依頼が突然入ってくることもあります。
修正依頼をしてくるクライアントは、イラストレーターを待たせても問題ないと軽くみている可能性も高いです。
信頼関係を築けないクライアントならば、継続的に仕事をするのは難しいでしょう。
まとめ
イラスト作成依頼で注意すべきポイントを紹介しました。
イラストレーターとして仕事の依頼を受けていると、様々な事態に遭遇します。
今回紹介したポイントに注意すれば、トラブルのほとんどを回避できるようになります。
トラブル回避のポイントと、悪質なクライアントを見分ける判断力を身に付け、気持ちの良い仕事を続けてください。
万が一、悪質なクライアントに引っかかってしまった場合でも、普段通りにイラストを作成しましょう。
そして、同じ失敗を繰り返さないように振り返りをすることが大事です。